
デンマークで建築士をやるということ(前編)―― 何でも「会議」で決めるお国柄
齋藤光代(建築設計事務所PLAN代表)
出典:『建築ジャーナル』2017年4月号「特集・海外仕事術」より再構成
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デンマークで建築の仕事をしていると聞くと、みなさんはどんなイメージを持たれるでしょうか。北欧デザイン、シンプルで洗練された住宅…そんな言葉が浮かぶかもしれません。でも実際に現場に立ってみると、そこには日本とはずいぶん違う「仕事の進め方」がありました。今日はそんなデンマークの建築現場のリアルを、私の経験からお話ししてみたいと思います。
何でも「会議」で決めるお国柄
デンマークでは、施主さん・構造設計事務所・意匠設計事務所がひとつのテーブルに集まって、たびたび会議を開きます。その場でその場で結論を出してしまう。これがとても合理的だと感じています。
行政の側にも心強い味方がいます。景観をきちんと判断できる専門の職員さんが伝統的に配置されていて、ときには土地探しまで一緒に手伝ってくれるんです。
一方でゼネコンは意匠設計には口を出しません。その代わり、設計報酬の最後の1割は竣工から1年後の検査を経てようやく支払われます。つまり竣工後1年間は、ずっと「この設計、本当に大丈夫でしたか」と問われ続けているようなもの。責任の重さを日々実感する仕組みです。
ちなみに外国人でも医療費は無料。市民の関心の高さや暮らしやすさも、この国の大きな魅力だと感じています。
現場から ―― ロスキルデの印刷所
最初にご紹介したいのは、1989年に手がけた印刷・機械工具輸入会社の平屋建て(延床約1,201㎡)です。性格の違う2つの会社が同居する、少し変わったプロジェクトでした。それまでデンマークになかった「タイルを埋め込んだPC板」を工場で製作し、現場で組み立てるという工法にも挑戦しています。
当時のデンマークでは、45〜50歳くらいの富裕層のあいだで、自宅を舞台にしたホームパーティーが大流行していました。「自分もビルを建てたい」と思い立ったある男性が、知人の紹介で私に声をかけてくれたのが、このお話の始まりです。
建設地はロスキルデ大聖堂にほど近い、趣のある古い町。市役所には景観に責任を持つ職員さんがいて、施主さん側のコンサルタントも交えながら、設計者・自治体・施主の3者で早い段階からじっくり打ち合わせを重ねました。
プロジェクトリーダーは週1回ほど現場に足を運び、施工が始まってからも毎週みんなで顔を合わせて進捗を確認。その場その場で必要なことを決めていく――基本設計3カ月、実施設計3カ月、施工10カ月というのが、だいたいの標準的なペースでした。
次回は、住民たちが自分たちの手で育てあげたコーポラティブ住宅「箱舟」のお話をお届けします。
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筆者プロフィール:東京生まれ。デンマーク王立アカデミー建築科卒業(デンマークの一級建築士取得)。一級建築士、上智大学外国語学部卒、東京大学卒業。ウッツオン事務所などを経て、1988年デンマークで設計事務所PLAN開設。2008年東京事務所開設。
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